料飲店トレンドと繁盛店事例

2020年3月3日

注目されるスパイス料理で人気の街バル

業界での経験が豊かな新世代系のオーナーによる、新しいスタイルの料飲業態が増加してきています。

また、世代群の多層化によって、料飲に対する価値「感」も変化や深化を見せていて、マーケットの多様化、細分化が起きてきています。

さらに、ネットでの情報交流が進み、行きたいお店は、スマホなどでピンポイントに探し出すことが今やスタンダードになっているために、選ばれるお店になるためには、行く意味となる「売り」の明確さと「特化力=オリジナリティ」づくりがより求められています。


専門・専科性は一つの「売り」として強みをみせますが、尖りすぎてしまうとリピート力を落とすことにもなります。

専門・専科性の中にも馴染みやすく、クオリティの高いメニューの提供とカジュアルなスタイルでリピート力を高めることがポイントといえそうです。


今回は、専門ジャンルの業態として、最近、注目され始めているスパイス料理を売りとした、自称スパイス研究家のオーナーによる「dining bar KANA(ダイニングバー カナ)」を取り上げます。


dining bar KANA(東京・東中野)
dining bar KANA

飲食店が並び揃う、東中野の商店街「東中野ギンザ通り」の入り口から1分ほどのところに2018年9月にオープンした「dining bar KANA」。女性1人でも入りやすい環境作りが意識されている。

dining bar KANA

コの字型カウンターに13席、2人用のテーブルが2卓、3人用テーブル1卓が用意された空間。カジュアルなバルスタイルの環境もあって一人のお客さまも多く来店する。スパイスバルではなくダイニングバーとしたのは、尖らずに敷居を低くして誰でも入りやすくするためだそうだ。

dining bar KANA

大阪出身の自称スパイス研究家のオーナー、金沢隆史氏は高校時代に喫茶店でアルバイトをするうちに飲食店に興味を持ったという。都ホテルの飲食部門やカフェレストランなどを経て25歳で上京する。そして六本木のアメリカ料理店時代にイタリアで修業したシェフに教えを受けてスパイス料理に目覚めた。

dining bar KANA

用意されたスパイスは約50種類以上で、日々、いろいろな試作によってメニューが考案されるという。軽くスパイスを使ったものから、何種類ものスパイスを使ってしっかりと仕上げたメニューなどが揃う。

dining bar KANA

看板メニューの一つであるテクス・メクスの代表料理の「チリコンカン」は5種類のスパイスが使われている。六本木のアメリカ料理店でシェフから教わったレシピを基にする。
単体の他、ペンネグラタンやドリアとしても提供し、人気となっている。

dining bar KANA

お店で人気の「スパイス玉子」は半熟のゆで卵を9種類のスパイスに漬け込んだもので一度食べると病みつきになるお客様も多いという。スパイス料理店らしい一品だ。

dining bar KANA

濃厚なトマトとバジルのソースで仕上げる「いいだこのトマトソースペンネ」はトマトソース好きには満足度が高いメニューだ。ペンネと合わせたいいだこが、こだわりソースのいいアクセントとなっている。

dining bar KANA

バルの定番人気のアヒージョは、このお店では「タコときのこのアヒージョ」が用意される。付け合わせのバケットはオーナー自ら買い出しに行く、日比谷の「ル・プチメック日比谷」のパンというこだわりをみせる。

dining bar KANA

お店の1番の看板メニューの「スパイシーチキンカレー」は15種類のスパイスを使ったオリジナルで有機玄米を合わせている。2019年、ぴあ発行の「究極のカレー 首都圏版」に掲載されたほどの自慢の味。海老の出汁でじっくり煮込んだえびカレーも人気だ。

dining bar KANA

一日5食限定のこだわりの「湘南みやじ豚100%のハンバーグ」。「湘南みやじ豚」は月100頭の限定出荷という希少な銘柄豚だ。食べ応えとおいしさを追及して試行錯誤を繰り返し、やっとできたオーナー渾身の逸品。

dining bar KANA

前菜のメニューには15種類程の料理が用意されている。その中から3つ選べるプレート、5つ選べるプレートが人気。写真は左が肉のポテトサラダ(肉と魚が用意される)、上がタコとアボカドのサラダ、右がアーリオ・オーリオ ブロッコリーの3種盛り合わせ。

dining bar KANA

ドリンクのメインはワインで白、赤、スパークリングを用意する。白、赤とそれぞれに5種類を揃え、グラス、ボトルの双方を選べる。ワインにはオーダーしやすいように1-10まで番号がついている。グラスワインは7杯取りのポーションで提供する。また、リスト外にゲストワインも白、赤各1種類用意があり、基本はグラスでいろいろ楽しむスタイルとなっている。(メニューは取材当日のもの)

dining bar KANA

白ワインの品揃え(取材当日)で、左からメニューの1番ラッチ・デ・ライム、2番サンアントニオ・ソアーヴェ・フォンタナ、3番ピースポーター ミヒュルスペルク、4番ヴァレ・ド・オーメン・ブランコ、5番マン・ソーヴィニヨン・ブラン・セラー・セレクトとなる。

dining bar KANA

赤ワインの品揃え(取材当日)で、左からメニューの6番エルサ・ビアンチ・マルベック、7番アトランティコ・レゼルバ、8番ファウンドストーン・シラーズ、9番シャトー・ペスキエ・キュベ・テラッセ、10番シャトー・ラモット・ボルドー・ルージュとなる。

dining bar KANA

ゲストワイン(取材当日)は白が、イタリアのピノピノ フッツァンテで、赤がやはりイタリアのロチェーノ ネレッロ・マスカレーゼでそれぞれグラス600円、ボトルが3,600円となる。

dining bar KANA

また、スパイス料理に合うということで、香草やスパイスを使った注目の国産のクラフトジンを揃えているところにもオーナーのこだわりが表れている。ジンはソーダ割りが人気となっている。

dining bar KANA

お店の棚に並べられたオーナーがこだわる厳選の国産クラフトジンはボトルの表情もみていて楽しめる。

dining bar KANA

カレーを軸に今、注目されるスパイス料理専門店。カレーの他にもパスタ、ドリアなどにタパス的な前菜料理を揃えたカジュアルスタイルのダイニングバー。気軽にスパイス料理が楽しめることから女性だけではなく男性の一人客も多いという。(女性客は約70%)また、40%以上のお客様がリピートで、年齢も30代から60代まで幅広い客層を捉えている。まさにオーナーが目指す「敷居が低く、間口の広い」業態ポジションが創り上げられている。


DATA

店  名
dining bar KANA
住  所
東京都中野区東中野3-8-5
電話番号
03-6279-2366
オーナー
金沢隆史 氏
営業時間
17:00~25:00
定 休 日
不定休
坪数・席数
9坪・20席
客 単 価
3,000円
開 業 日
2018年9月

参考資料:メニューの一例(取材当日のもの)

フードメニュー1
dining bar KANA

基本的には1オペレーション(20:00からはドリンク担当のアルバイトが加わる)のために早く提供できる前菜メニューが多く用意されている。

フードメニュー2
dining bar KANA

ワインやジンソーダなどと合うスパイス料理や、一品料理が用意される。メニューの表現もわかりやすくオーダーがしやすい。

スパークリングワイン
dining bar KANA

スパークワインは、グラスで提供されるのは、バック・カヴァ・エクストリシモとハーディーズ・スタンプの2種類。スパークリングワインを使ったカクテルが4種類用意される。
スパークリングワインの人気が高いそうだ。

ドリンクメニュー1
dining bar KANA

珍しいのは、ホットドリンクのお酒が8種類も用意されているところで、オーナーが狙う間口の広い客層(特に女性客)が意識されている。

ドリンクメニュー2
dining bar KANA

お客さまにできるだけ好きなものを飲んでもらいたいという想いから、注目されつつあるボタニカル系や焼酎の品揃えもあり、メニューの幅広さを感じる。


ご注意

※掲載店について、カクヤスとの取引の有無は関係ありません。

※取材時点での情報です。

※最新の営業状況は店舗にお尋ねください。

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